竹取物語「かぐや姫のおひたち①」解説|光る竹から生まれた少女
竹取物語「かぐや姫のおひたち①」解説|光る竹から生まれた少女

今回から、『竹取物語』の本文を、原文・現代語訳・重要語句・文法ポイントつきで読み進めていきます。
第1回で扱うのは、物語の冒頭です。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。
「今は昔」という言葉から始まるこの一文は、日本の物語文学の出発点ともいえる有名な冒頭です。
竹を取って暮らしていた老人が、ある日、光る竹を見つけます。そこには、小さく愛らしい女の子がいました。
この場面は、赫映姫、つまり「かぐや姫」の誕生場面です。
同時に、『竹取物語』全体の神秘性を読者に強く印象づける、とても重要な場面でもあります。
この記事でわかること
- 『竹取物語』冒頭部分の内容
- 「今は昔」の意味
- 竹取の翁がどのような人物か
- 光る竹の中からかぐや姫が見つかる場面
- 重要古語「けり」「なむ」「たり」「なめり」の基本
- 古文を自然な現代語に訳すポイント
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今回読む原文
今は昔、竹取の翁といふものありけり。
野山にまじりて、竹を取りつゝ、萬づの事に使ひけり。
名をば讃岐造麿となむいひける。
その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。
翁言ふやう、「われ朝夕毎に見る竹の中に、おはするにて知りぬ。
子になり給ふべき人なめり」とて、手に打入れて家に持ちて來ぬ。
妻の嫗に預けて養はす。
美しきこと限りなし。
いと幼ければ籠に入れて養ふ。
ここでは、竹取の翁の紹介から、光る竹の中に小さな少女を見つけるところまでが語られています。
現代語訳
今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。
翁は野や山に分け入って、竹を取っては、さまざまなことに使っていた。
名前を讃岐造麿といった。
その竹の中に、根もとが光っている竹が一本あった。
不思議に思って近寄って見ると、竹の筒の中が光っていた。
それを見ると、三寸ほどの人が、とてもかわいらしい様子で座っていた。
翁が言うことには、
「私が朝夕いつも見ている竹の中にいらっしゃることで分かった。
この方は、私の子におなりになるはずの方のようだ」
と言って、手の中に入れて家に持って帰った。
そして、妻の嫗に預けて育てさせた。
そのかわいらしさは、このうえなかった。
とても幼かったので、籠に入れて育てた。
場面のポイント|物語は「今は昔」から始まる
『竹取物語』の冒頭は、次の一文から始まります。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。
「今は昔」とは、「今となっては昔のことだが」という意味です。
現代の昔話でいう「むかしむかし」に近い表現です。
ただし、『竹取物語』の「今は昔」は、単なる昔話の合図ではありません。
読者を日常の世界から、少し遠い過去の物語世界へ連れていく働きをしています。
この一文によって、私たちは「これから不思議な物語が始まる」と自然に感じるのです。
竹取の翁とはどんな人物か
冒頭では、竹取の翁について次のように説明されています。
野山にまじりて、竹を取りつゝ、萬づの事に使ひけり。
翁は、野山に入って竹を取り、それをいろいろな用途に使って暮らしていました。
つまり、身分の高い貴族ではありません。
都の中心で華やかに暮らす人物ではなく、自然の中で竹を取って生活する素朴な老人です。
その名前は、讃岐造麿とされています。
物語では、彼が竹を取って生活していたこと、そしてその日常の中で不思議な竹に出会うことが語られます。
普通の生活の中に、突然、神秘的な出来事が起こる。
何気ない日常に、ある日突然、異世界の存在が現れる。
その最初のきっかけが、光る竹なのです。
光る竹の発見

翁は、竹の中に一本だけ、根もとが光っている竹を見つけます。
その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。
ここで出てくる「本」は、「もと」と読みます。
「本光る竹」とは、「根もとが光っている竹」という意味です。
翁は、その竹を不思議に思って近づきます。
すると、竹の筒の中が光っていました。
この「光」は、『竹取物語』全体を貫く大切なイメージです。
かぐや姫は、ただ美しいだけの人物ではありません。
彼女は、光を放つ存在として描かれます。
そのため、読者は最初から「この少女は普通の人間ではない」と感じることになります。
三寸ばかりなる人
翁が光る竹の中を見ると、そこには小さな人がいました。
三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。
「三寸」は、現在の長さでいうと約9センチほどです。
つまり、竹の中にいた少女は、とても小さな存在でした。
しかし、その姿は「いと美しうて」と表現されています。
ここで注意したいのが、古文の「美し」です。
現代語の「美しい」と完全に同じではありません。
古文の「美し」は、主に「かわいらしい」「愛らしい」「いとしい」という意味で使われます。
したがって、ここでは「とても美しい」というよりも、「とてもかわいらしい」「愛らしい」と訳すと自然です。
重要古語:美し
美しは、古文では「かわいらしい」「愛らしい」「いとしい」という意味で使われることが多い語です。
現代語の「美しい」とだけ覚えていると、訳が少しずれるので注意しましょう。
翁はなぜ「自分の子になる人」と思ったのか
翁は、竹の中にいた少女を見て、次のように言います。
われ朝夕毎に見る竹の中に、おはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。
現代語にすると、次のような意味です。
「私が朝夕いつも見ている竹の中にいらっしゃることで分かった。
この方は、私の子におなりになるはずの方のようだ。」
翁は、少女をただの発見物のようには扱いません。
「おはする」「給ふ」という尊敬語を使っています。
つまり、翁はこの小さな少女に対して、最初から特別で尊い存在として接しているのです。
かぐや姫は、翁にとって「拾った子」ではあります。
しかし同時に、天から授かったような存在でもあります。
翁はその不思議さを直感的に受け止め、自分の子として育てることを決めます。

重要文法①「けり」
冒頭には、助動詞「けり」が何度も出てきます。
- ありけり
- 使ひけり
- いひける
- ありける
「けり」は、過去や詠嘆を表す助動詞です。
物語の冒頭では、過去の出来事を語る働きが強くなります。
たとえば、
竹取の翁といふものありけり。
は、「竹取の翁という者がいた」と訳します。
古文の物語では、この「けり」が出てくることで、昔の出来事を語り始める雰囲気が生まれます。
重要文法②「なむ」と係り結び
次の文に注目してみましょう。
名をば讃岐造麿となむいひける。
「なむ」は強調の係助詞です。
係助詞「なむ」があると、文末が連体形になります。
そのため、本来なら「いひけり」となりそうなところが、「いひける」になっています。
係り結びのポイント
なむが出てきたら、文末が連体形になることがあります。
「なむ〜ける」の形は、係り結びの基本例として押さえておきたい表現です。
重要文法③「たり」
光る竹を見つける場面では、次の表現が出てきます。
筒の中光りたり。
「たり」は、完了・存続を表す助動詞です。
ここでは「光っていた」と訳すのが自然です。
つまり、「光った」という一瞬の動作ではなく、「光っている状態だった」という意味になります。
重要文法④「なめり」
翁の言葉の中に、次の表現があります。
子になり給ふべき人なめり。
「なめり」は、「なるめり」が縮まった形です。
断定の助動詞「なり」と、推定の助動詞「めり」が合わさっています。
意味は「〜であるようだ」です。
したがって、「人なめり」は「人であるようだ」と訳せます。
この場面の読みどころ
この冒頭場面の読みどころは、日常と非日常の出会いです。
竹取の翁は、いつも通り野山に入って竹を取っています。
そこに、突然、光る竹が現れます。
そして、その中には小さな少女がいる。
この展開は、とてもシンプルですが、物語として非常に強い力を持っています。
なぜなら、読者はすぐに疑問を持つからです。
- この少女は何者なのか
- なぜ竹の中にいたのか
- なぜ光っていたのか
- 翁の子になるとはどういうことなのか
- この先、どんな運命が待っているのか
物語の冒頭として、読者を引き込む力が非常に強い場面です。
かぐや姫は「授かりもの」として描かれる
翁は、竹の中の少女を見つけた瞬間に、彼女を自分の子になる人だと受け止めます。
ここには、「子どもは授かるもの」という感覚も読み取れます。
かぐや姫は、普通に生まれた子どもではありません。
竹の中から現れ、光を放ち、翁の家にもたらされます。
そのため、彼女は人間の世界に属していながら、最初から人間を超えた存在として描かれています。
この「人間世界に現れた特別な存在」という設定が、後の月の都への帰還につながっていきます。
重要語句まとめ
| 語句 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 今は昔 | いまはむかし | 今となっては昔のことだが |
| 翁 | おきな | 老人、年を取った男性 |
| 嫗 | おうな | 老婆、年を取った女性 |
| 讃岐造麿 | さぬきのみやつこまろ | 竹取の翁の名前 |
| 萬づ | よろづ | さまざま、いろいろ |
| 本 | もと | 根もと |
| あやし | あやし | 不思議だ、変だ |
| 三寸ばかり | さんずんばかり | 三寸ほど、約9センチほど |
| 美し | うつくし | かわいらしい、愛らしい |
| おはする | おはする | いらっしゃる |
| 限りなし | かぎりなし | この上ない、非常にすばらしい |
今回のまとめ
今回は、『竹取物語』の冒頭部分を読みました。
竹取の翁は、野山で竹を取り、それをさまざまなことに使って暮らしていました。
ある日、翁は根もとが光る竹を見つけます。
不思議に思って近寄ってみると、竹の中には三寸ほどの小さな少女がいました。
翁はその少女を、自分の子になるはずの人だと考え、家に持ち帰ります。
この少女こそ、のちのかぐや姫です。
この場面は、『竹取物語』全体の始まりであり、日常の中に突然、神秘的な存在が現れる重要な場面です。
今回のポイント
- 「今は昔」は、昔話の始まりを示す表現
- 竹取の翁は、竹を取って暮らす素朴な老人
- 竹取の翁の名は、讃岐造麿
- 光る竹は、非日常への入口として描かれている
- かぐや姫は、最初から人間離れした存在として登場する
- 「美し」は、古文では「かわいらしい」と訳すのが自然
- 「なむ〜ける」は係り結びの基本例
次回予告
次回は、竹取の翁がかぐや姫を見つけた後の出来事を読みます。
翁は、竹の中から黄金を見つけるようになり、だんだん豊かになっていきます。
そして、小さかったかぐや姫は、わずかな期間で美しく成長していきます。
次回は、「竹取の翁この子を見つけて後に」から、かぐや姫がすくすくと成長する場面を解説します。


